音響の底なし沼にズブズブと引き込まれて
Chain Reactionから99年リリースの12"「Huone」と00年のリリースの12"「Ranta」の2枚の全曲をコンパイルしたもの。
聴いているうちにVladislav Delayの作った音響の底なし沼にズブズブと引き込まれていくよう。
終始くぐもったような音がブクブクと生き物のように鳴り響き、気づいたらその世界から抜け出すことができないくらいの深みにはまってしまっている。
こんなにくぐもった音が一貫して鳴り続けるアルバムはそうはなく、人によっては不快感すら覚えそう。
徹底してアブストラクトでダビーなサウンドを埋め尽くしたところに潔さを感じ、非常に好感が持てるが、これを作っていたときの精神状態は良くなかったらしい。
晴れ間のないどんよりとした天気、決してすっきりと晴れることのない霧につつまれたような世界。
灰色に染まったモノクロームな世界をただ独りゆらゆらと迷い、彷徨っているような唯一無二の奇跡の音世界。
間違いなくChain Reactionの代表作のひとつに数え上げられるであろう本作をぜひ。
Vladislav Delay自身のレーベル「Huume」からの再発盤(07年)もある。
「Chain Reaction」はMark ErnestusとMoritz Von Oswaldによる「Basic Channel」のサブレーベルで95年よりスタート。現在までに35枚の12"と11枚のCDをリリースしている。
短期間の活動の間にシーンに多大な決定打を与えた「Basic Channel」直系のディープな音を多くの多彩なアーティスト達が引き継ぎ、かつ発展させてきたその功績は本家共々大きく、現在においても多くのアーティストにその影響を見ることができる。
リリースされたCDのうち6番目のCRD-06までは特徴的な錫製の缶ケースに入れられ、所有欲をより一層かりたたれるデザインとなっている。CRD-07よりCRD-11まではグレーのモノクロームな渋いデジパック仕様となっている。
CD
CRD-01 Porter Ricks/Biokinetics(1996)
CRD-02 Vainqueur/Elevations(1997)
CRD-03 Various Artists/Decay Product(1997)
CRD-04 Monolake/Hongkong(1997)
CRD-05 Substance Session/Elements(1998)
CRD-06 Various/... Compiled(1998)
CRD-07 Fluxion/Vibrant Forms(1999)
CRD-08 Hallucinator/Landlocked(1999)
CRD-09 Vladislav Delay/Multila(2000)
CRD-10 Matrix/Various Films(2000)
CRD-11 Fluxion/Vibrant Forms II(2000)
Posted at 2013-08-01