孤高の極寒ダークアンビエント
遠い地鳴りのような、くぐもった音響で幕を開けるこのアルバムは、北欧のダークアンビエント・マスターPeter Anderson による一人プロジェクトRaison d'etre の、長らく廃盤だった4作目に、Live音源2曲を加えたリマスター盤。
ダークアンビエントには荒廃した終末世界が似合うけれども、彼の場合は廢教会だなあと思うのは、しばしば立ち現れるグレゴリオ聖歌や鐘、巡礼の鈴の音色のイメージでしょうか。尾を引きながら重なり合う殘響音は、かつて教会だったその場所に吹寄せられた殘留思念。乾き切った冷たく哀しいその世界に色はなく、打ち上げられた貝殻みたいに白いのです。絶望さえも消え果た空虚な音像空間に、おもむろに立ち現れる宗教的旋律は、一種荘厳ですらある。
パイプオルガンのようなもの、賛美歌の断片など、音樂要素が比較的高い本作や、『The Empty Hollow Unfolds』などは割とイメージが掴みやすくてお奨めです。
が、しかしそこはそれ、“ダーク”・アンビエントには違いないので、陰鬱、暗黒、効果音、ビロ〜ン、ドヨ〜ンが苦手な人には不氣味な音塊としか聞こえない筈。所謂ヲタクに片足突っ込んでいる者の云うことなので、ジャンルに覚えのない人は、私の「聴きやすい」を鵜呑みにしてはいけません。汗
http://blog.sanatorium.jp/?eid=163632
スウェーデンから冷たく暗い音を発信し続けるダークアンビエント界の超人Raison d'Etreの長らく廃盤だった初期名作の復刻盤。この作品は、マニアの間でもとりわけ評価の高かった4thアルバムをリマスターし、2曲のライブバージョンを追加して新作として生まれ変わったもの。まさに題名のとおりの、悲哀、静寂、孤独感漂う寒々しいサウンドが、リマスターでブラッシュアップされ更にリアルに響いてきます。特にグレゴリオ聖歌をフィーチャーした幻想的なサウンドコラージュが、あまりにも美しく、凍てついた北の大地を彷徨う魂たちへのレクイエムにも聞こえる。この作品を聴かずしてダーク・アンビエントは語れない、このジャンルでの最マストアルバムです。
http://www.x-rec.com/SHOP/SPE-894.html
discogs
Cold Meat Industry
Raison D'etre
Posted at 2012-08-24