日本の原発のサウンドトラック
ノルウェーのGeir JenssenによるBiosphereの、2011年作、Touchよりリリース。
このアルバム制作に関する本人のコメントがレーベルサイトにありますので、以下翻訳して掲載。
戦後の日本の経済的奇跡にインスパイアされたアルバムを作ろうと決心した。
より詳しい情報を求めて検索していたところ、美浜原発の古い写真を見つけました。
この未来的な外観の原発が、海に近い美しい場所にあるという事実に、私は興味を持ちました。
地震や津波は大丈夫なのだろうか?
調べてみると、原発の多くは地震の多い地域にあり、中には過去に津波に襲われた海岸に隣接している原発もあることがわかった。
美浜の写真をきっかけに、日本の原発だけに焦点を絞るようになりました。
建築、デザイン、ローカライズに集中しながら、潜在的な放射能の危険性(地滑りや地震で冷却装置が破壊されるなど)にも疑問を持ち、いくつかの原発のサウンドトラックを作りたいと思ったのです。
原子力安全・保安院の院長が言っていたように。原発は非常によく設計されており、『そのような事態は事実上ありえない』」。(Touch公式サイトより https://touch33.net/catalogue/to84-biosphere-n-plants.html)
アルバムは2011年2月13日には完成していて、3.11を予感していたかのような印象を持ってしまいます。
アーティストの感性は時に不思議な偶然を引き起こすものです。
アルバムの内容は柔らかいエレクトロニカっぽい抑制されたリズムにふんわりと包まれるようなシンセが被さり、穏やかに静かに進行していきます。
個人的には日本のInoyama Landの作品を思い出してしまいました。
科学技術を結集して作り上げられた原発の危うさと美しさを、クールさと温かみのあるサウンドを上手く融合させることで「N-Plants」日本の原発サウンドトラックを作り上げています。
このアルバムからは悲観的なイメージというよりは科学と経済を称賛する象徴的な存在である日本の原発を、完成された建築美と危うさを孕んだ存在としてシニカルに捉えるGeir Jenssenのクールな眼差しが感じられます。
私。それは私。私よ…(#5 Monju-1)
Posted at 2022-03-21