終わらない夏、儚い叙情的なノイズ
比較的エクスペリメンタルな音を発表してきたクリスチャン・フェネスだが、このアルバムは叙情的な表現がメインとなり、結果、多くの人の賛同を得ることとなった。
実験的要素と聴きやすさ、音響ノイズの中に見え隠れする美しくも儚いメロディ。
相反する要素が微妙にブレンドされて融合しているところにこのアルバムの良さがある。
この、さじ加減の絶妙さがこのアルバムの最大の価値ではないだろうか。
流れるノイズの中に甘美なギターが弾かれ、混じり合い、ノイズ自体もメロディとなり、楽器となって、終わりなき夏をロマンティックに表現しているのだろうか。
でも決してポップに陥ることなく音響/エレクトロニカとしての表現をも確立しているところがすばらしい。
人によっては中途半端に感じるかもしれないこういった表現こそ、幅の広い表現が求められ、作者の力量が試されるので一番難しいと思う。
こういった点でもこのアルバムが絶大な支持を得ている理由が窺えるのではないだろうか。
個人的には3「 A Year In A Minute」がいい。
ボーズ・オブ・カナダ等とともにお奨めできるエレクトロニカの定番アルバムのひとつ。
オーストリアMEGOのオリジナル盤のほか、国内盤、ジャケットデザインが違うリマスター・デラックス盤などがある。
Posted at 2012-08-24