やすらぎと祈りの音楽
Virginia Astleyは1959年生まれのイギリスのシンガーソングライター。
この盤は83年のファーストアルバム「From Gardens Where We Feel Secure」から全9曲と82年発表のEP「A Bao A Qu」から「Sanctus」を、84年発表のEP「Melt The Snow」から全曲をパッケージした日本独自企画盤で、Virginia Astley自身のレーベル「Happy Valley Records」から発表された作品の初CD化だそうです。(「Sanctus」はこのCDのために再録音されたもの)
邦題は「サンクスタス」になっていて、これ1枚で初期のVirginia Astleyの魅力と才能を十分堪能できるお得な盤になっています。
Virginia Astleyは溢れ出る豊富な音楽の才能を活かし、作曲から歌唱、ピアノ、フルートまで、1人で何でもこなすアーティストで、基本的にクラシック的な素養を持ったアーティスト。
本CDの最初から9曲目までを占めるファーストアルバム「From Gardens Where We Feel Secure」は、朝と午後に分かれていて、初夏のイギリスの庭からの自然風景が、とても穏やかに豊かに表現されています。
故郷のオックスフォードシャーでフィールドレコーディングされた音源を多用して、そこにVirginia Astleyのピアノとフルートが自然に絡み合い、溶け込んで、この上ない安らぎの音楽を聞かせてくれます。
僕自身もイギリスの片田舎を旅したことがあるのですが、この音楽はまさにその体験そのものをリアルに蘇らせるほど、あののどかな風景を思い起こさせてくれます。
ただ彼女の音楽の素晴らしいところは単なる風景描写だけにとどまらず、もっと深いところの、精霊的な感覚というか神聖な雰囲気さえ感じさせる音楽になっているところだと思います。
10「Sanctus」はまさに神秘的な聖歌ですし、11〜13の「Melt The Snow」も冬の雪が溶けて春を待つ牧神と妖精のための弦楽四重奏になっています。
どうりでこの後、坂本龍一が気に入って彼女のアルバムをプロデュースするわけです。
Posted at 2022-02-17