吉村 弘 – Soundscape 1 - Surround

Misawa Home 1986

1. Time After Time(11:03)
2. Surround(3:44)
3. Something Blue(5:46)
4. Time Forest(10:48)
5. Water Planet(2:22)
6. Green Shower(6:07)

Label: Misawa Home – C32SD-1
Series: Soundscape Series
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 1986
Genre: Electronic
Style: New Age, Ambient

日本におけるアンビエント・ミュージックのパイオニアによる傑作

日本におけるアンビエント・ミュージックのパイオニアである吉村弘による86年作の4枚目のアルバム。
レーベルはミサワホーム総合研究所で「Soundscape Series」と銘打ったシリーズの第1弾。ちなみにこのシリーズは次の第2弾の広瀬豊「Nova」との2作品のみ。
ライナーのプロフィールには1940年横浜生まれ。早稲田大学文学部卒業後、「空気のような音楽」をテーマに音のパフォーマンス活動を展開している。とありますが、経歴を見ると、美術館などの公共の施設で流すための音を中心に制作してきたようで、アンビエントを提唱したブライアン・イーノの「ミュージック・フォー・エアポーツ」などと共鳴するコンセプトの作品や活動がメインのようです。また、音だけではなく、グラフィック・デザインやヴィジュアル・ポエトリーを絡めた空間芸術の制作で、様々な場所で活動してきたところも、イーノと共通するところであると思います。
まさに日本の「環境音楽」の先駆け的存在で、近年、その評価は高まるばかりで、2019年2月には日本のアーカイブ・シリーズを展開している米シアトルのリイシュー・レーベル「Light in the Attic」から「Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990」というコンピレーションがリリースされ話題になりました。
この作品は80年代らしく、New Ageっぽい音使いでメロディを感じさせつつも、公共施設などでの音楽パフォーマンスをしてきた方だけあって、なるほど、美術館等の雰囲気を感じさせる洗練された音になっていると思います。
時代が遡り、今の耳で改めて聴くと、セレモニーホールなんかで流れる紋切り型のありふれたヒーリングミュージックに成り下がらないギリギリのところで、穏やかで優しい音使いが心地よく、柔らかい空気に包まれて至福の時を誘うアンビエントになっています。
本CDのライナーにはご本人の言葉が綴られていますので、この言葉が吉村弘の作品コンセプトを理解するには一番だと思いますので、そのまま掲載します。(原文ママ)

「透明な音の波動は空気を浄化し、まわりに豊かな波紋をひろげていく。くりかえし、くりかえされていくもの、周期なり、サイクルといったものが、漠然とした空間に、やさしさに満ちた気品のある音の風景で、限りなく心を開かせてくれる。それでいて音がなっていても静けさを感じさせてくれる音楽。音で空間をつつみこむことで、空間を豊かなものに変えていく。音によるインテリアと呼んでみてもいい。単に視覚的なもののインテリアばかりでなく、インテリアとしての音楽は、心のインテリアにほかならない。」
これはかつて、ハロルド・バッドのピアノコンサートのために書いた文章の一節ですが、私の音楽に対する姿勢でもあります。空気に近い音楽によって、聞く人それぞれの音風景に出会えるような、あるいは居心地のいい空間になるような、音と音楽との中間領域をひろげていく、新たな視点にたったものとして、この“Surround”を聞いていただければ幸いです。音量は会話のさまたげにならないくらいで、コーヒー・カップやスプーンの音、足音やエアコンの音もいっしょに音の仲間に入れてあげてください。窓の外から聞こえてくる街のノイズを加えてみても、一味ちがって聞こえてくるかもしれません。 吉村 弘

discogs

Posted at 2022-02-14

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